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タイとの共同研究
初めて、タイを訪問したのは1990年3月だった。薬学及び、ポリマー・天然物化学関係の日本学術振興会の拠点大学方式の学術交流事業として、日本側は東大、タイ側はチュラロンコン大学及び、チュラポーン王女研究所を拠点とする大学間の共同研究が始まった。
第1回は日本側が東大の大沢学部長を団長とする代表団を送り、協力大学の東北大、富山医科薬科大、千葉大、広島大、長崎大などが参加してバンコクにおいて、今後の方針などが検討された。タイ側は協力大学として、マヒドン大、コンケン大、シラパコーン大、プリンス・オブ・ソンクラ大、チェンマイ大などが参加した。彼等は薬学部長会議で日本へ派遣する研究者の人選を行なうことになった。
主な事業は、共同研究による相互の派遣、拠点の特別枠による国費留学生及び、論博学生の積極的受入れ、2年に一度の二国間セミナーなどで、10年間活発な交流事業が続いたが2000年を以って一先ず、終了した。
この間、我々の研究室では、コンケン大のチャイアン助教授および、チェンマイ大学のソラサク助教授をそれぞれ、2ヶ月間の受入れて、共同研究の功を上げた。薬剤学研究室、分析学教室、附属病院薬剤部も、それぞれ、この事業の中でタイの研究者を受け入れた。1995年には、コンケン大学薬学部との学部間交流協定を締結することが出来た。1996年の天然物化学のセミナーで招待講演を行ない、1998年の生化学のセミナーでは広島大学薬学の井出、高野教授が参加して発表した。1995年から99年にかけて、ほぼ、毎年、タイ国を訪問し、北部メーサイ付近、中部のロエイ付近、南部マレー半島ソンクラ付近、東南部コーチャン島、西北部メーホンソンなどの野外植物調査を行なった。また、拠点枠として、文部省国費留学生を受け入れ、現在コンケン大学からの留学生トリペッチ・カンチャナプームが大学院に在学中である。彼は精力的に研究を続けている。(参考:最近の業績)
具体的には、タイの民間薬、ノウゼンカズラ科のMillingtonia hortensisから多数のphenylpropanoidを単離したほか、新規骨格を有するアルカロイドmillingtonineを単離、構造決定し、また、本植物から既に単離されて、構造が再度、提唱されていた幻のフラボノイドhortensinの構造を主としてNMRの解析により、訂正した。また、キツネノマゴ科のClinacanthus nutansから、硫黄を含む、特異的な構造をした配糖体を5種発見することが出来た。更に、1m以上の巨大な花を咲かせる寄生植物Raffreciaから、各種のガロタンニンを単離、構造決定した。現在、抗糖尿病の開発を目指して、北部タイの植物を検索中である。
10年間にタイに8回行った。その間に(薬用)植物園や原野などで撮った植物の写真(278枚)です。